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食品の賞味期間の表示を「年月日」から「年月」に変更する動きが、メーカーや小売りで広がっている。まだ食べられる食品を廃棄する「食品ロス」が社会問題となる中、食用が可能な範囲で期間に幅を持たせ、無用な廃棄や安売りを減らす狙いだ。現在は調味料などの加工食品や飲料品が中心。物流や在庫管理の効率化にもつながる。追随する企業が増えてきそうだ。
農水省によると、国内の食品ロスは年間621万トン(2014年)に上る。ロス削減を掲げる農水省と経済産業省の協議会を通じ、食品メーカーや小売り大手は表示の変更を検討してきた。トラック運転手や倉庫作業者が不足しており、物流効率化の側面からも表示移行を後押しする。
既に賞味期間表示を「年月」に変更する動きは活発化している。食品大手の味の素は2月から中華調味料3品を年月表示に変更。8月から即席スープや鍋用調味料など73品目に対象を拡大した。残る90品も19年度中の移行を目指す。
飲料大手、サントリー食品インターナショナルは、来年1月から賞味期間を表示変更する飲料製品を拡大する。18年中に5ブランド・約80品を移行し、年月表示する商品の割合を全体の約9割に高める方針だ。同社は「廃棄や管理する作業を減らすことができ、コスト削減につながる」と、効率性の向上を挙げる。
流通大手のイオンは来年4月から、プライベートブランド(PB)の加工食品の表示変更に乗り出す。小売業がPBの賞味期間の表示を年月に変更するのは初めてで、まずシチュー、釜飯用調味料、蜂蜜の3品目が対象。19年秋までに、賞味期間が1年以上のPB加工食品全てを年月表示に切り替える。
「グループ全体で年間16万トンの食品廃棄がある」と同社。生鮮品の加工や総菜製造で発生する食品廃棄物を堆肥に活用する資源リサイクルの実施規模も拡大しながら、食品ロス発生量を25年までに半減させる方針だ。
スーパーでは賞味期間の3分の1を過ぎた食品は納品を受け付けない商慣習があり、メーカー収益の悪化要因となっている。原材料の農産物を適正価格で取引する観点からも対応が必要になっている。
賞味期間表示を見直し、廃棄や環境負荷を減らそうという意識が食品業界で強まっている。企業単独の動きだけではなく、今後はメーカーと物流や小売りなど受け入れ側が一体になった取り組みが拡大の鍵となる。
大阪から神戸かけては大手や老舗、新興の洋菓子メーカーや店舗がひしめくスイーツ激戦区。その中でも、1931年設立のモロゾフは、1932年に日本で初めてバレンタインチョコレートを発売するなど、神戸の洋菓子業界の先駆者だ。
そのモロゾフの業績が、三十余年ぶりに過去最高を更新しようとしている。
■32年ぶりの最高純益更新が視野に
9月4日、第2四半期決算発表と同時に今2018年1月期の業績見通しを上方修正。営業利益は21億5000万円(前期比7%増)、当期純利益は14億5000万円(同18.2%増)になりそうだ、と発表した。
営業利益では1987年1月期の21億6400万円に肉薄し、純利益は1986年1月期に記録した14億3100万円を32年ぶりに更新する見通しだ。
期初には相次ぐ百貨店閉鎖で売上高、営業利益ともに減少を予想していたが、これで2度目の上方修正だ。株価も1月26日につけた年初来安値4970円から大きく上昇し、10月6日の終値で7290円をつけるなど上昇基調にある。
同社は直営15店、百貨店や専門店の中に1137店、ほか喫茶店やレストランなどを運営している。焼き菓子の「アルカディア」や「オデット」、「ファヤージュ」は贈答品として定着しているほか、「関西人の家には、モロゾフのプリンの空き容器が必ず何個かある」といわれるほど、身近な存在でもある。
■生産性改革プロジェクトが効果を発揮
もっとも、1995年の阪神・淡路大震災では神戸の工場が被害を受け、2011年の東日本大震災では被災した仙台工場の閉鎖を余儀なくされるという経験をした。
このため、神戸市にある西神工場(1983年竣工)、六甲アイランド工場(同1994年)という2つの工場を主力と位置づけ、既存の広島や名古屋、神戸御影といった工場を閉鎖し、供給体制拡充と生産性向上を図る施策も講じてきた。
こうした改革をより実効あるものにするため、ここ5年ほど進めているのが「生産性改革プロジェクト」だ。
「生産性改善は従来も行っていたが、形骸化していたところもあった。生産本部長が代わり、生産性に注意を向け、改善し、高めるという問題意識を(従業員に)植え付けた。意識改革の側面が強い」(山岡祥記専務)
外部のコンサルタントを導入し、西神工場、船橋工場、六甲アイランド工場など主力拠点の業務フローを順次見直し、無駄取りやラインの改善を進めた。
規模の小さい福岡工場や札幌工場は、主要工場の取り組みから得られたノウハウを水平展開し、標準原価中心の管理から生産性を柱に据えるなど意識改革を進めた。
モロゾフは阪神・淡路大震災後から2000年あたりまで業績低迷が続き、採用を手控えていた時期がある。1970年代入社の従業員が定年を迎え、これから人員が減少していくという背景もあり、生産性を高め、少人数でも現場を回していける体制が不可欠だったのだ。
「高所や重量物に関連する作業は男性の担当、仕分けなどの軽作業は女性の担当となっていたが、機械化することで女性はもちろん、誰にでもできる作業にした。結果、ラインに入る人数を減らすことができ、労務費が下がる一方で生産性が高まった」(山岡専務)
今年で国内工場の生産性改善は一巡した。この間、毎年10~20%の原価低減が進み、原料価格の上昇も想定の範囲に収まった。
また、これまで外注で作っていた「ファヤージュ」を内製に切り替え、内容を改定したところ大ヒットし、「ファヤージュショコラ」といった派生商品まで生み出すなど、さまざまな要因が重なり、業績は急改善している。
■中計は前倒しで達成する見込みだが・・・
ただ、モロゾフ側はもろ手を挙げて喜んでいるわけではない。
「生産性向上と原価低減に寄与してくれた社員への還元は必要だし、(採用を手控えてきたために)減ってきた社員の補充もしなければならない。また、販売や喫茶事業は人手不足の状態で来2019年1月期以降は人件費の増加が見込まれる。老朽化対応や成長のための投資も必要になってくる」(山岡専務)
現在、モロゾフでは製造現場改革の次のステップとして、間接部門の生産性向上に取り組んでいる。ベテランからパート社員まで業務をポイント制にし、トータルポイントを指標として、コストを削減する。つまり、ポイントの高いベテランの業務を若手に委譲し、人材育成と業務効率化を進めようということだ。
今期からスタートしている中期経営計画の第1ステップ(2020年1月期)の目標は、売上高290億円、営業利益6.2%(約18億円)。数字の上では今期中にクリアしてしまうことになる。
一方で、百貨店閉鎖や人口減少といった構造要因に加え、洋菓子の原材料であるナッツ類などは天候に左右されやすく、新興国の経済成長で調達価格が上昇するといった点も懸念される。
神戸スイーツの先駆者は改革が成果を上げてもなお、強い危機感の中にいる。
山本 雅則 :東洋経済 記者