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第2回では「食べ過ぎかどうかはカロリー計算ではなく体重計に聞け」と書いた。そして「BMI【※1】が25以上なら食べ物を減らせ」とも書いた。そこで「何を減らすか」である。
これまでに提唱されたダイエット法、しかも大流行したダイエット法だけに限っても10くらいはすぐにあげることができる。朝バナナダイエット、納豆ダイエット、タマネギダイエット、リンゴダイエット、低インシュリンダイエット、断食ダイエット、糖質制限ダイエット・・・・等々、枚挙にいとまがない。これらに共通していることが2つ。1つは「ある人(有名人や医師などの専門家であることが多いが、たまには無名人のこともある)がこの方法でやせた」という事実があること。2つめが「いくら大流行しても一定期間後にすたれる」こと。
ビジネスパーソンならすぐに理解できると思うのだが、ある個人(ある組織)がある方法で成功を収めたとしても、普通はすぐに飛びついたりはしないものだ。そこでは成功したがそれはウチにも通用する方法なのか? 「一時的な成果」ではないのか? そもそもその情報はガセネタではないのか? など、慎重に検討を重ねるはずだ。にもかかわらず、ダイエット法になると(相当に優秀なビジネスパーソンであっても)すぐに飛びつく人が多いのはなぜなのだろうか?
前回書いたようにダイエットの基本は「エネルギーの出納」、言い換えれば「カロリーの出入り」である。消費カロリーよりも摂取カロリーのほうが多ければ太るし、その逆であればやせる。会社の経理や家計簿とまったく同じ理屈だ。支出よりも収入のほうが多ければ出納はプラスになるし、収入よりも支出のほうが多ければ出納はマイナスになる。ごく基本的で単純な理屈だ。
【※1】
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
消費カロリーというのは運動量に左右されるし、摂取カロリーというのは飲食に左右される。次回で触れようと思うが、運動による消費カロリーの増加はとても大変である。なので、エネルギーの出納をマイナスにもってくるためには「飲み食いを減らす」しかテがない。カロリーは、かならずあなたの口から入ってくる!
体重を減らすために「○○ダイエット」を実践しようと思う人は、そのダイエット法が「消費カロリーを増やす」ことになっているかどうか、あるいは(こちらの方が重要だが)「摂取カロリーを減らす」ことになっているかどうかを確かめてほしい。ビジネスパーソンなら冷静に考えればわかるはずだ。「朝食をバナナと水だけですませば、昼と夜は何を食べてもいい」などという方法で摂取カロリーが減るわけがない。つまり体重が減るわけがない。
これはどんなにエライ先生が提唱しようが、テレビでシャレタことをしゃべっている有名人が力説しようが同じで、ダメなものはダメ。「糖質を制限すると、こうこうこういう理屈で代謝が変化し体重が減少する」などととうとうと解説しても、糖質とほとんど同じカロリーをもっているタンパク質の摂取量が増えたり、糖質よりもカロリーが多い脂肪の摂取量が増えたりすればトータルの摂取カロリーは増加するので、体重が減るわけがない。
ついでに紹介すると、カロリー源となる栄養素は糖質とタンパク質と脂質の3つ。つい最近までこの3つを三大栄養素と呼んでいたが、カロリー源となるというだけで「三大」という呼称は科学的ではないということで、2年前からこの3つをエネルギー産生栄養素というようになった(正確にはなったが、理解しにくい言葉になった)。ビタミンやミネラルは、重要な栄養的働きをしはするが、カロリー源になはならない。
誤解のないようにいっておくが「糖質制限をしても体重は減らない」といっているわけではない。糖質制限をしてかつトータルの摂取カロリーが減少すれば(=タンパク質や脂質が増えなければ)体重は減る。このことは、制限する栄養素が糖質であろうがタンパク質であろうが脂質であろうが、同じ。ということは、タンパク質制限ダイエットも成立するし、脂質制限ダイエットも成立する。
ただし、いずれの場合も「ある栄養素を含む食品を制限する」ということになると、たとえ体重は減少したとしても、摂取する食材の数が激減してしまう。つまり摂取する栄養素の種類が減少するので不健康になるリスクはぐんと高まる(このことはこのコラムの第1回で書いた)。
ところで、断食はどうだろうか? これは、ここに書いた理屈からいって(間違いなく摂取カロリーが減るので)体重はかならず減少する。ただし、カロリーが減るだけではなく、摂取栄養素がゼロになる訳なので、そのうち健康を害する。治療のために必要な患者が医師の指導の元で行なう「断食療法」以外は絶対に薦められない。短期間だけ行なうプチ断食は、その期間だけは間違いなく体重が減るが、日常生活に戻れば体重は元に戻る(どころか反動で増えてしまうケースも多い)ので、これも薦めない。
また、DNA説はどうだろうか? 極端な説としては「水を飲んでも太るDNAが親から遺伝している」というもの。ここまで読んできた読者はすでにおわかりだと思うが、ノーカロリーの水をいくら飲んでも(たとえDNAがどんな作用をしても)摂取カロリーが増えることはない。そこまで極端ではなくとも「口から入ったカロリーが体脂肪になりやすい」というDNAを持っている人はあるかもしれない。
ただし、ここで注意しなくてはならないことがある。それは、DNAのせいにしてしまうと「真の原因=食べすぎ・飲みすぎ」が見えなくなってしまうことだ。「水を飲んでも太る体質」なのだからとあきらめるがゆえに「適量の飲食をする」ことがおろそかになる。原因を正しく認識できないと正しい対応ができなくなる点は、ビジネスもダイエットもまったく同じである。
さて、食べ過ぎや飲みすぎの人が「適量の飲食」にするには何を減らせばいいのか? 今は栄養学も個人対応の時代である。一人ひとりの生活を分析し、飲食物を調べ上げ、摂取カロリーを計算し、体質を見極めて「何をどれだけ減らせばいいか」という結論を導き出す。しかし、それは至難の業に近いし、ここでそんなことをやる余裕はない。
「何を減らせばいいか」は個人によって大きく異なるのだが、たった1つだけ「すべての人にあてはまる」真理がある。体重を減らしたい人が最初に制限すべきもの、それは「あなたの一番好きなもの」である。お酒の好きな人はお酒を、揚げ物を好きな人は揚げ物を、スイーツを好きな人はスイーツを、「少しだけ」減らす。
たとえば、毎日お酒を飲んでいる人は休肝日を週に一日だけ作る、毎日甘いものを食べている人なら週に一度だけ休甘日(これは私の造語)を作る、週に2回てんぷらを食べている人があったら週に一度にする、などから始めてみよう。
ダイエットをする際、嫌いなものから減らしていく人をときどき見かける。私は長い間この仕事をしているが、嫌いなものを食べすぎて太っている人に出会ったことがない。嫌いなものを減らしても減量効果はほとんどない。一番好きなものを少し制限する・・・・これがダイエットのコツなのだ。
「好きな食べ物を減らす」というと怒る人がいる。「自分の人生、何が悲しくて好きなものを減らさなくてはならないのか!」と。しかし、私は「やめろ」といってるわけではない。「健康のために少し減らそう」と提案しているだけだ。それをせずに、肥満のままの生活が長く続くと、将来、本物の糖尿病や脂質異常症(高脂血症といっていた疾病)や高血圧症になるリスクが極めて高い。
たとえば糖尿病になると、医師からは「お酒はやめなさい」といわれるだろう。「制限する」のではなく「断酒」を指示される。断酒などそう簡単にできることではないので、飲み続けることになるが、その後は脳血管障害や心臓血管障害が待っている。仕事や遊びどころではなく、生命の危険さえ伴う。そうならないうちに「少し制限する」生活を始めるのが、まともなビジネスパーソンのスマートな選択である。